まずは、自分の足と目を頼りに歩いてみましょう。少しくらいの遠回りや勘違いは、新たな発見だと思えばこれほど楽しいものはありません。
今回は高層ビルが建ち並ぶ横浜公園通りを歩いてみました。
目的はホテルニューグランドとその周辺です。話には聞いていたのですが、いざ目の前にしたホテルニューグランドはかつての港町横浜を蘇らせてくれる。歴史の生き証人そのものでした。
さて、ホテルニューグランドをどこから書いたら良いか辺りを徘徊してみました。同じ被写体をあらゆる方向から描いてみるのもスケッチ画の醍醐味ですからね。
何枚か描いているうちに、その場にないものが見えてきたりあるものが無くなったりして、スケッチがが出来上がってきます。これこそ絵空事の心地よさです。
ほぼ出来上がったところで遅いランチタイムとなります。近くでお店を探すのもまた自分の足と目が頼りになります。なにしろグルメ情報もない、勘だけが頼りですからね。時にはえらい目にあったりしますが、それもまた現場取材の一環ですから、後から思えば貴重な体験となります。
こうしてランチタイムも合わせて約3時間のスケッチを終え、帰途となります。
ところで、欲張りな私はそれだけでは満足しません。帰宅するなりその日の取材地の歴史を探索するのです。
その日私が描いていた場所は、かつてはなんと海の上だったのです。そしてホテルニューグランドは、そこから少し離れた海岸辺りに位置していたのです。明治時代の頃です。当時はここをフランス波止場と呼んでいたそうです。
港町横浜のほとんどは1923年の関東大震災で壊滅状態となってしまい、その時の瓦礫を埋め立てて造られたのがいまの山下公園です。
先人たちの努力には頭が上がりません。おかげで自分の足と目を頼りに、歩く、描く、味わう、知ることのできる貴重な体験でした。